「カメはハ虫類である」
というような文を論理学では「命題」(proposition)と呼ぶ。
さらに、「カメはハ虫類である」という命題は、
「あるもの(x)がカメである」
「あるもの(x)がハ虫類である」
という2つの命題に分解でき、前の方の命題を「前件」(antecedent....the first half of a hypothetical proposition)、
後ろの方の命題を「後件」(consequent....the second half of a hypothetical proposition)と呼ぶ。
中学校の数学では、この前件の部分を「仮定」、後件の部分を「結論」として取り扱っている。すなわち、
「あるもの(x)がカメである」ならば、「あるもの(x)がハ虫類である」
という形で。
この場合、「あるもの(x)がハ虫類である」ことは、「あるもの(x)がカメである」という条件無しにも可能である。(例えば、ワニやトカゲであってもよい。)
そうではあるが、「あるもの(x)がカメである」という命題が成立すれば (「真」truth ならば)、それだけで「あるもの(x)がハ虫類である」という命題は必然的に「真」になる。それだけで、もう十分である。
であるから、「あるもの(x)がカメである」という命題は、「あるもの(x)がハ虫類である」という命題の「十分条件」(sufficient condition)である。
他方、「あるもの(x)がハ虫類である」という命題が成立する(「真」である)ことは、「あるもの(x)がカメである」という命題が成立するために不可欠な条件である。なぜなら、(魚類や両生類であって)ハ虫類ではないが、カメではあるという動物は、存在しないからである。
であるから、「あるもの(x)がハ虫類である」という命題は、「あるもの(x)がカメである」という命題の「必要条件」(necessary condition)である。
以下に「十分条件」・「必要条件」・「必要十分条件」の順に、要点を列挙しておく。
十分条件(sufficient condition)
「m = 3 であるとき u = 9」
という命題において、
m = 3 は u = 9 の「十分条件」である。
(m = -3 でもよいが、m = 3 であれば十分であるから。)
必要条件(necessary condition)
「m = 3 であるとき u = 9」
という命題において、
u = 9 は m = 3 の「必要条件」である。
(9以外の数になってはいけないから。)
必要十分条件(necessary sufficient condition)
「△ABCにおいて AB = BC = CA ならば、△ABCにおいて∠A=∠B =∠C」
という命題を挙げることができる。
この命題では、「前件」の「△ABCにおいて、AB = BC = CA」と「後件」の「△ABCにおいて、∠A =∠B =∠C」を入れ替えても、命題全体は必ず「真」である。
つまり、「前件」は「後件」のための「必要十分条件」であり、「後件」は「前件」のための「必要十分条件」である。