喜びへの頌歌  (交響曲第9番)
Ode an die Freude

  本当に久々になりますが、今回はベートーヴェン (Ludwig van Beethoven) の交響曲第9番の合唱を取り上げてみます。この曲は4つの楽章からなっていて、第4楽章が有名な合唱曲「喜びへの頌歌」(Ode an die Freude)です。歌詞はシラー (Friedrich von Schiller 1759〜1805) の詩であり、 この歌はEU統合の象徴歌となっています。また、4半世紀ほど前に東西のドイツが統一されたときには、市民たちはFreudeFreiheit(自由)と言い換えて歌いました。
  学生時代に音楽オタクの人間に随分と講釈されたこともあり、小生はこの曲の押し付けがましい歌詞は好きではありませんが、素人でも練習すれば参加できる合唱曲になっていることは、評価したいと思います。

  それではドイツ語の原文と小生の訳を示したいと思います。ドイツ語の歌詞は、Wikipediaのドイツ語のページに掲載されているものを引用します。


  O Freunde, nicht diese Töne!
  おお、友たちよ、こんな音響ではなく!
  Sondern laßt uns angenehmere
  我らにもっと心地よく
  anstimmen und freudenvollere.
  歌い始めさせてくれ、そしてもっと喜びで満たして。
  Freude! Freude!
  喜びよ!  喜びよ!

  Freude, schöner Götterfunken
  喜びよ、美しい神の閃光よ
  Tochter aus Elysium,
  楽園からやってきた娘よ、
  Wir betreten feuertrunken,
  我らは炎に酔いしれて進む、
  Himmlische, dein Heiligthum!
  天国の、あなたの神聖な場所へ!
  Deine Zauber binden wieder
  あなたの諸々の魔法は再び結び付ける
  Was die Mode streng getheilt;
  当世がバラバラにしてしまったものを。
  Alle Menschen werden Brüder,
  すべての人々が兄弟になる、
  Wo dein sanfter Flügel weilt.
  あなたの柔らかな翼があるところでは。

  Wem der große Wurf gelungen,
  1人の友の友になることが
  Eines Freundes Freund zu sein;
  大成功した人と、
  Wer ein holdes Weib errungen,
  可愛い妻を得た人は、
  Mische seinen Jubel ein!
  自らの歓喜を混ぜ合わせよ!

  Ja, wer auch nur eine Seele
  そう、この地上にいてただ1人の心だけを
  Sein nennt auf dem Erdenrund!
  自分のものと呼んでいる人も!
  Und wer's nie gekonnt, der stehle
  そして、どうしてもそのことができなかった者は、
  Weinend sich aus diesem Bund!
  泣いてこの[友の]輪から出てゆくがよい!

  Freude trinken alle Wesen
  すべての生き物が
  An den Brüsten der Natur;
  自然の懐の上で喜びに酔い。
  Alle Guten, alle Bösen
  善いものも悪いものもすべて、
  Folgen ihrer Rosenspur.
  彼女[自然]のバラの痕跡を追いかける。

  Küsse gab sie uns und Reben,
  彼女[自然]はキスと葡萄と、
  Einen Freund, geprüft im Tod;
  死で試される友を与えた。
  Wollust ward dem Wurm gegeben,
  悦楽は虫にも与えられて、
  Und der Cherub steht vor Gott.
  そして天子は神の前にいる。

  Froh, wie seine Sonnen fliegen
  陽気に、神の輝く星たちが、
  Durch des Himmels prächt'gen Plan,
  天の壮大な計画によって動いて行くように、
  Laufet, Brüder, eure Bahn,
  歩め、兄弟たちよ、君たちの道を
  Freudig, wie ein Held zum Siegen
  喜んで、英雄が勝利に向かうように。

  Seid umschlungen, Millionen!
  抱擁せよ、何百万の者たちよ!
  Diesen Kuß der ganzen Welt!
  このキスを全世界に!
  Brüder, überm Sternenzelt
  兄弟たちよ、天の星の世界に
  Muß ein lieber Vater wohnen.
  親愛なる父が住んでいるに違いない。
  Ihr stürzt nieder, Millionen?
  君たちは堕落するのか? 何百万の者たちよ。
  Ahnest du den Schöpfer, Welt?
  君は造物主を予感するのかい? 世界よ。
  Such' ihn überm Sternenzelt!
  神を星の世界に捜し求めよ!
  Über Sternen muß er wohnen.
  星たちの上に彼は住んでいるに違いない。

  Seid umschlungen, Millionen!
  抱擁せよ、何百万の者たちよ!
  Diesen Kuß der ganzen Welt!
  このキスを全世界に!
  Brüder, überm Sternenzelt
  兄弟たちよ、天の星の世界に
  Muß ein lieber Vater wohnen.
  親愛なる父[神]が住んでいるに違いない。
  Seid umschlungen,
  抱擁せよ、
  Diesen Kuß der ganzen Welt!
  このキスを全世界に!
  Freude, schöner Götterfunken
  喜びよ、美しい神の閃光よ
  Tochter aus Elysium,
  楽園からやってきた娘よ、
  Freude, schöner Götterfunken, Götterfunken.
  喜びよ、美しい神の閃光よ、神の閃光よ。


  Und wer's nie gekonnt, der stehle Weinend sich aus diesem Bund!
の部分は、どうも不自然(冷たい)感じがしますが、文法的には上記のように訳すのが正しいことになりそうです。少し説明してみます。
  wer は先行詞を含む関係代名詞でありまして、 wer's  wer+直接目的格(W格)のesという形の複合語です。 nie gekonnt は英語では could never do もしくは  could never have done に近い意味になります。しかも、本来ならば wer's nie gekonnt hat と現在完了形に用いられるべきところが、分詞構文的に wer's nie gekonnt という形で用いられています。
  さらに、
der stehle weinend sich aus diesem Bund!  の der は、 (関係代名詞ではなく) 指示代名詞でなのであり、従ってその直後に動詞が来ます。その動詞 stehle は接続法(Konjunktiv)1式と呼ばれる形の3人称単数形であり、動作主へ要求する意味合いを含んでいます。

  流れているMIDIは、 こちらのFree MIDI のページよりダウンロードしました。

   Ode an die Freude

  You Tubeにて歌が聴けます。 IE (インターネット・エクスプローラ) で再生の方は下の音楽プレイヤーを止めてから、 上のオレンジ色の文字をクリックしてください。
  2009/12    2014/05
 

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